笑顔になれて本当に良かった❗いつも食べているミキサー粥に加え、娘さんにもお願いして事前に準備してもらった、軟飯、とろろ芋、メカブ、ネギトロ、百均の専用調理器具でつくってもらった温泉卵、柔らかく煮たうどん。もともと船乗りさんなのでお酒のみで、お刺身や海藻がお好きだそうです。うどんはすこし厳しかったけど、軟飯は咀嚼・食塊形成は十分できていました。咽頭残留の程度はミキサー粥と変わらず、誤嚥はなく、2、3口摂取後の交互嚥下で残留除去可。ミキサー粥にしておく理由はありません。今回病院の主治医より直接依頼をいただき退院後二週間での介入でした。初回評価では上顎義歯は不適合で口腔衛生状態不良。構音障害はでているものの、舌筋力は比較的維持されており、粗大運動は可。家族への口腔衛生指導、義歯調整後の内視鏡下嚥下機能検査。ケアマネからは最近易怒性と拒否がますます強く、十分な介入ができず、困っていると報告をうけておりましたが、今日は、初めて何回か笑顔もみせてくれました。ご本人がこれまでどうやって生きてこられたか、本人と家族は本当はなにで困っていて、何を望んでいるか、を把握して、それに答えていければ、とてもつらい病気でも少し幸せになれるお手伝いをできるかもしれません。そしてやはり、歯医者だからってのもあるかもしれませんが、口腔機能評価と必要な歯科的介入、補綴(失われた歯の機能を回復すること)の重要性を再確認しました。林、竹山2017.07.29 11:29
最近のレジンは長持ちする?今回は、ヘルスリテラシーについて少し。ヘルスとは、健康という意味です。リテラシーとは、溢れるほどに膨大な情報の中から必要な、あるいは正しいものを選択する能力のことです。したがって、ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を正しく選択する能力と言えます。先日、大阪でご開業の佐藤琢也先生による、ヘルスリテラシーについての素晴らしい講演会に参加したので、少し紹介します。例えば、「最近のレジンは長持ちする」と言われたとして、皆さんはどう感じるでしょうか?「へー、そうなんだ」と簡単に納得した人がいれば、それは要注意です。「最近」という言葉は、どのくらいの時間経過を想定するでしょうか?「最近、ジムに通い始めた」「最近、風邪気味だ」いずれの例も、ここ数日あるいは数週間くらいを想定するのではないでしょうか?一方、「長持ち」という言葉は、どのくらいの時間経過を想定するでしょうか?10年、20年、あるいはもっと長い期間ではないでしょうか?つまり、最近の製品が長持ちするかどうかなんて、誰も確認したことがないわけで、それでも長持ちすると期待されるにはそれなりの根拠が必要となります。特に、人の健康や医療に関する情報を取捨選択する場合は、上記にような「一見正しいように見えるが実は破綻している情報」に気を付けなければいけません。医療の現場では、常に様々な選択に迫られます。どのような術式にするか、どのような薬を使うか、等。しかし、現実では、「先輩がやっているから」とか、「以前、この薬剤を使用してうまくいったから」とか、そういう、経験値や人の意見という、科学的根拠に乏しいことに基づいて重要な決断がなされていることが散見されます。健康グッズや食品会社による広告などを注意深く読んでいると、様々な危険な情報を見つけることがあります。例えば、「歯医者さんの100%が推奨する歯ブラシ」とか言われても、僕はインタビューされたことありませんし、一体どこのどんな、何人の歯医者さんにインタビューしたのかをはっきり説明する必要があると思います。「歯医者の友達3人に聞いたら、3人がいい歯ブラシだと言った」という条件であっても、「100%の歯医者さんが推奨」と言えてしまうわけです。日本国民全てが、高いヘルスリテラシーを身につければ、それはとても素晴らしいことなのですが、簡単ではないでしょう。それならばせめて、我々医療従事者は、健康や医療に関する情報だけでも、正しく理解し、発信出来るようになればいいなと、切に願います。田中2017.07.28 05:45
カチカチカチ 赤い紙噛んでください?今日は噛み合わせの調整について我々の私見を少し。入れ歯であろうと、歯のかぶせ(クラウン)であろうと、噛み合わせは高過ぎず、低過ぎず、ちょうど良いのが良いんです。また、カチカチカチと噛んだときの、左右両側の奥歯の接触が同時であることが重要です。しかし、歯科医師と歯科技工士によって作製される人工の歯(歯科技工物)がいつもピッタリ噛み合うわけではなく、微調整を繰り返してから患者さんに提供することがほとんどです。そこでもっとも大切で、もっとも難しくもあるのが、噛み合わせの調整です。人の歯、それを支える骨、骨を覆う歯肉、顎関節は全て、力を加えるとわずかに変形するある種の柔らかさを持っています(これを専門的には粘弾性といいます)。したがって、噛み合わせの良し悪しを判断するときは、弱い力で噛んでもらったときの上下の歯の接触を見て行うのが望ましいと思います。強い力で噛んでしまうと、歯や骨が微妙に変形して、あたかも全ての歯が均等に噛み合っているように見えてしまう危険性があります。次に、歯の接触を評価ための手法について紹介します。①咬合紙頻繁に使用されるのが、咬合紙と呼ばれる、薄くて赤い(青い場合もある)紙です。これは、当たっているところが赤くなりますので、どの歯のどの部分が接触しているかが良く分かります。しかし、この方法には決定的な欠点があります。それは、この咬合紙自体にも厚みがあるという点です。例えば、30マイクロメートルの厚みの咬合紙を使用した場合、20マイクロメートルまで近接してはいるが接触していない場合であっても、赤色が着いてしまうので、接触有りと判断されてしまいます。②手指感覚カチカチカチと軽く噛んでもらうと、下顎の歯が上顎の歯に当たって、上顎の歯がわずかに振動します。これを指で感じて、左右の歯の接触のタイミングを判断します。親指と人差し指の腹の部分で上顎の奥歯の外側(頬側)に触れ、カチカチカチ噛んでもらいます。入れ歯が入っている場合は、しっかりと粘膜に適合させて噛んでもらうことが肝要です。上にも下にも入れ歯が入っている場合は、両手で義歯を押さえてから噛んでもらうことが良い場合があります。③エクザバイトシリコン系咬合採得材(商品名 エクザバイト)を使って咬合接触を評価するのも良い方法だと思います。下顎の歯列にエクザバイトを一定量おき、軽く噛んでもらって硬化を待ちます。固まったエクザバイトを光にかざして、光の抜け具合で接触を判断します。咬合紙法の欠点であった、ある程度の厚み以下は検出できない点はエクザバイト法で解決可能です。以上、代表的な方法を3つ紹介しました。正確な評価ができるのは②と③ですが、②と③だけだと実際に接触している部位を判断しにくいので、②と③である程度の狙いを定めて、①で部位を特定し、削るという流れになるかと思います。この際に、重々注意しなければいけないことは、噛み締め強度です。必ず、弱い力で噛んでもらうことが非常に重要です。上記のような調整を繰り返して、1. 両側臼歯の同時接触2. 強い噛み締め時と弱い噛み締め時とで、咬合接触点が変わらないことを達成するのが、咬合調整です。カチカチ噛んだときの咬合接触が安定していることは、咬合調整の中でももっとも優先される事項です。田中2017.07.24 22:56
あれ、歯はあるけど噛み合わない ってどういうこと? 今回は、シングルデンチャーやすれ違い咬合などのいわゆる難症例への対応について説明しました。シングルデンチャー症例とは、片顎だけ無歯顎でその反対顎は有歯顎という症例のことで、すれ違い咬合症例とは、上下顎ともに部分的に歯が残ってはいるものの、それらが噛み合っていない症例のことを指します。例えば、上顎には右半分だけに、下顎には左半分だけに歯が残っている症例です。前後的にすれ違っている場合もあります。なぜ難しいかというと、いくつか理由があるのですが、最大の理由は、歯と歯茎とが噛み合う関係になってしまい、一方的に歯茎の方がダメージを受け、その結果様々な障害が生じることにあります。専門的には受圧と加圧の関係の不均衡と言います。二つ目の理由は、噛み合う歯を失った歯はニョキニョキとその高さを伸ばす特徴があり、もともと存在していた位置よりも何ミリか伸びてしまうことにあります。この場合、義歯を作る際のその高さを歯に合わせて作製するととても背の高い義歯になってしまい、一体どうすれば良いのかよく分からなくなることがあります。これを、専門的には咬合平面の不整と言います。上記の理由で、噛み合う歯を失った歯を有する症例は大変な難症例とされていて、上下とも無歯顎の場合よりも難しいかもしれないと思うことがあります。前置きが大変長くなりましたが、今回の講義では、上記の難症例への対処法をいくつか紹介したので、ここにまとめようと思います。①残存歯の抜去 全ての歯を抜いてしまえば、上記問題は全て解決します。しかし、義歯の留め金を掛けるための歯を失ってしまうことになるため、義歯の安定が損なわれてしまいます。また、患者さんや家族等と十分な信頼関係が成立していないと、オーバートリートメントと誤解される危険性があるので注意が必要です。 歯を抜去するという選択肢は、一見オーバートリートメントに思われますが、例えば少数歯のみ残存でありかつその歯が重い歯科疾患に罹患している場合や、その歯によって対顎の歯肉に著しい障害が生じている場合は、十分に選択肢の一つとして考慮されるべきだと思います。②残存歯を根面板にする 残存歯の歯の頭(歯冠)を削除して歯の根(歯根)だけ残してレジンや金属によってそれを被覆し、総義歯とほぼ同様の形の義歯をその上にのせて使用することが選択される場合があります。残存歯の高さを大きく減じることができるので、咬合平面の不整は解決されます。歯を抜かないので、比較的同意の得やすい方法だと思います。しかし、残存歯根の周囲骨の形態によっては、義歯の辺縁封鎖による吸着が得られないことが多く、結局①の選択肢や後述のアタッチメントの必要性を痛感されたことのある先生方は少なからずいらっしゃることと思います。③アタッチメント根面板にアタッチメントを設置すれば、②の欠点であった維持不良を解決することができます。今回の講義では磁性アタッチメントを紹介しました。④サベイドクラウン適切な歯の高さ(歯冠高径)でありかつ義歯にとって都合良く支持・把持・維持が得られる形態に設計したクラウンをサベイドクラウン(既にサベイイングされたクラウン)と言います。非常に安定度の高い義歯が作製できるので、優れた選択肢の一つと考えられますが、歯科技工士に高い技術が要求されることに注意が必要です。また、抜髄を免れない場合があるので、その場合は患者さんや家族等に十分に説明し、同意を得る必要があります。⑤上記のような前処置をせずそのまま義歯作製費用や侵襲性等を考慮し、結局何の前処置もせずに義歯作製することもあります。一旦義歯を作製して信頼関係を構築した後に、更なる義歯の安定化を図って、前処置、義歯修理を繰り返して、機を見て義歯を再度作製することもあります。また、講義の後半では、有床義歯の技工過程についての説明や歯科技工士の立場からの歯科医師への提言を、Matsuda Oral Appliance代表 松田信介さん(歯科技工士)にお願いしました。本研究会では、義歯や技工に関する講義や実習セミナーを低価格でお受けしています。また、歯科医師、歯科技工士の派遣も行っております。ご依頼の際はこちらへご連絡をお願いいたします。義歯の講義の総集編として、9月3日の未来院長塾にて講演予定です。田中2017.07.22 00:57
【活動報告(7月8日)】摂食嚥下の生理学島根県で勤務医をされている酒井翔悟先生に御講演いただきました。摂食嚥下の病態の理解とリハビリテーションの組み立てに,生理学は決して切り離すことができない必要な分野です.Andre J et al. Brain Stem Control of Swallowing:Neuronal Network and CellularMechanisms. Physiolocical Reviews. 2001という嚥下の生理学に関する300以上の論文をレビューした総説論文の内容を中心に摂食嚥下の生理学についてわかりやすく解説していただきました.講師:酒井翔悟先生 略歴:2011年 新潟大学歯学部卒業2012年 新潟大学医歯学総合病院 歯科研修医として勤務2013年 新潟大学医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 博士課程 2016年 同上修了 新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科勤務2017年 同上退職.島根県松江市 ケンゾー歯科医院酒井に勤務2017.07.17 10:28
【6月役員定例会ならびに症例検討会(6月28日)】6月の役員会をグランフロントナレッジサロンにて行いました。食支援・地域医療連携に関連する内容で①看護師によるレクチャー②管理栄養士によるレクチャー③言語聴覚士によるレクチャーを企画しました。(日程は未定)また、会則のマイナーチェンジが役員の全員一致をもって決定されました。(会則は修正済み)【症例検討会】(担当:林宏和)重度認知症患者の摂食嚥下障害症例について、スクリーニング評価ならびにVE下での直接訓練の所見から、診断、治療方針の立案について検討しました。次回の7月役員会は7月26日に行います。事務局長:田中2017.06.28 14:10
【活動報告(6月24日)】 「地域包括ケアシステムにおける開業歯科医師の役割」(田中佑人) 「ヘルスリテラシーのための統計学」(田中佑人) 姫路市開業の歯科医師の先生方から依頼を受け、医科歯科連携や地域とどう関わるべきかについてのセミナーを開催しました。また、巷に溢れている様々な情報を正しく取捨選択するための能力(リテラシー)を身に付けるためのセミナーも同日に開催しました。2017.06.25 02:58
【活動報告(6月9日)】大阪の食支援・地域医療連携推進を考える会「評価票を用いた摂食嚥下機能評価の実践セミナー」(担当:林宏和)今回は、VEを用いない、評価票を用いた摂食嚥下機能評価の実習を行いました。評価表による評価の利点として、低侵襲(ほとんど無侵襲)で特別な機器や特殊な資格を必要としないため、いつでもどこでも誰でもできることが挙げられます。歯科医師に加え、言語聴覚士、看護師、歯科衛生士も参加し、大いに盛り上がりました。2017.06.10 06:06
【活動報告(6月8日)】大阪の食支援・地域医療連携推進を考える会 第2回 訪問先でも役に立つ、明日から使える総義歯・部分床義歯のエッセンス (担当:田中佑人)今回は主に、部分床義歯の勉強をしました。総集編として、9月3日に未来院長塾にて講演予定です。2017.06.09 06:46
6月は食育月間です。毎年6月は食育月間、6月19日は給食の日です。今月は各地で食に関する勉強会やイベントが開催されます。当勉強会も、食支援を目的とした義歯のレクチャー、摂食嚥下機能評価の実習セミナーを開催します。詳細はこちらへ。2017.05.31 22:40
勉強会のお知らせ6月8日(木)に田中佑人先生による義歯のレクチャー、6月9日(金)に林宏和先生による摂食嚥下機能評価の実習セミナーを開催することが決定しました。詳しくはこちらへ。2017.05.30 10:03