今日は噛み合わせの調整について我々の私見を少し。
入れ歯であろうと、歯のかぶせ(クラウン)であろうと、
噛み合わせは高過ぎず、低過ぎず、
ちょうど良いのが良いんです。
また、カチカチカチと噛んだときの、左右両側の奥歯の接触が同時であることが重要です。
しかし、歯科医師と歯科技工士によって作製される人工の歯(歯科技工物)がいつもピッタリ噛み合うわけではなく、微調整を繰り返してから患者さんに提供することがほとんどです。
そこでもっとも大切で、もっとも難しくもあるのが、
噛み合わせの調整です。
人の歯、それを支える骨、骨を覆う歯肉、顎関節は全て、力を加えるとわずかに変形するある種の柔らかさを持っています(これを専門的には粘弾性といいます)。
したがって、噛み合わせの良し悪しを判断するときは、弱い力で噛んでもらったときの上下の歯の接触を見て行うのが望ましいと思います。強い力で噛んでしまうと、歯や骨が微妙に変形して、あたかも全ての歯が均等に噛み合っているように見えてしまう危険性があります。
次に、歯の接触を評価ための手法について紹介します。
①咬合紙
頻繁に使用されるのが、咬合紙と呼ばれる、薄くて赤い(青い場合もある)紙です。これは、当たっているところが赤くなりますので、どの歯のどの部分が接触しているかが良く分かります。しかし、この方法には決定的な欠点があります。
それは、この咬合紙自体にも厚みがあるという点です。
例えば、30マイクロメートルの厚みの咬合紙を使用した場合、20マイクロメートルまで近接してはいるが接触していない場合であっても、赤色が着いてしまうので、接触有りと判断されてしまいます。
②手指感覚
カチカチカチと軽く噛んでもらうと、下顎の歯が上顎の歯に当たって、上顎の歯がわずかに振動します。これを指で感じて、左右の歯の接触のタイミングを判断します。親指と人差し指の腹の部分で上顎の奥歯の外側(頬側)に触れ、カチカチカチ噛んでもらいます。入れ歯が入っている場合は、しっかりと粘膜に適合させて噛んでもらうことが肝要です。上にも下にも入れ歯が入っている場合は、両手で義歯を押さえてから噛んでもらうことが良い場合があります。
③エクザバイト
シリコン系咬合採得材(商品名 エクザバイト)を使って咬合接触を評価するのも良い方法だと思います。下顎の歯列にエクザバイトを一定量おき、軽く噛んでもらって硬化を待ちます。固まったエクザバイトを光にかざして、光の抜け具合で接触を判断します。咬合紙法の欠点であった、ある程度の厚み以下は検出できない点はエクザバイト法で解決可能です。
以上、代表的な方法を3つ紹介しました。
正確な評価ができるのは②と③ですが、
②と③だけだと実際に接触している部位を判断しにくいので、②と③である程度の狙いを定めて、①で部位を特定し、削るという流れになるかと思います。
この際に、重々注意しなければいけないことは、噛み締め強度です。必ず、弱い力で噛んでもらうことが非常に重要です。
上記のような調整を繰り返して、
1. 両側臼歯の同時接触
2. 強い噛み締め時と弱い噛み締め時とで、咬合接触点が変わらないこと
を達成するのが、咬合調整です。
カチカチ噛んだときの咬合接触が安定していることは、咬合調整の中でももっとも優先される事項です。
田中
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